大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和60年(く)272号 判決

記録を調査して検討するに,本件公訴事実の概要は,いわゆる中核派全学連副委員長の地位にある被告人遠坂裕夫及び同全学連菱田決戦行動隊長の地位にある被告人武田久太が共謀の上,ほか約20名の者とともに,成田用水土地改良区事務所前に押しかけ,「成田用水7月着工実力阻止,流血の現地血戦に突入せよ,中核派」などと記載した横断幕を掲げ,「成田用水実力阻止」などのシユプレヒコールを繰り返し,その間,被告人両名において,右土地改良区事務局長藤原幹生に対し,こもごも,脅迫文言を記載した文書を読み上げ,これを同事務局長に手交し,更に同旨を口頭で申し向け,同土地改良区が成田用水事業にかかる作業を中止しないときは,中核派全学連において,同人を含む同土地改良区の役職員に対し,いわゆる東峰十字路警察官殺害事件や東鉄工業社員焼殺事件同様の危害を加える旨を告知し,もって,同事務局長に対し,団体及び多衆の威力を示し,かつ,数人共同して,脅迫した,というものであるところ,被告人らはいずれも中核派全学連の幹部の一人であり,本件被告事件は同派全学連の組織的行動の一環として行われたものと目されるところ,被告人らはいずれも捜査段階において事実関係のみならず身上についても黙秘し,公判段階においてこれを徹底的に争っており,本件の全容が罪証隠滅の余地がない程度に解明されているとはいえない。そして,審理の進行状況についてみるに,検察官の立証はおおむね終了し,弁護人側の反証段階にあって,採否未定の弁護人請求にかかる同意書及び刑訴法328条書面の採否の決定及び採用したものの取調べのほか各被告人の質問の全部を2期日で終了し,論告,弁護及び各被告人の陳述を1期日で行い結審する旨を裁判所,検察官及び弁護人間で申し合せていることが認められるが,これまでの審理の状況等からすると,なお,今後の被告人,弁護人の主張立証のいかんによっては取調べた証人等を含む関係者を更に証人として取り調べる必要に迫られる可能性が存するのであって,記録からうかがわれる本件犯行の態様,各被告人が果した役割,組織における地位等を勘案すると,各被告人を保釈した場合には,各被告人が自己の影響力を行使し,自らまたは組織の力を利用してこれら関係者に働きかけたり,あるいは被告人間で通謀したりして,罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると認められる。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!